食器は食事を供する際に必要であり、食品を盛りつけたり、直接口に接するものであるため、その品質を知り、正しく取り扱うことが必要である。また、繰り返し使用するため、洗浄が必要となる。
洗浄が不適当な場合は衛生上非常に問題である。一般家庭では、食器の数が少ないのであまり問題ないが、大量の食器を使用する集団給食施設や飲食店では洗浄が不十分になることも考えられる。特に油脂類で汚れた食器では残留が著しく、食器洗浄器を使用した場合、完全に洗浄できていないことも考えられる。
洗浄した食器に糖質、脂質などの食品成分が残留しているか否かを試験することは衛生上重要なことである。今回の実験では洗浄後の食器にどの程度・どの部分に残留物があるかを知り、正しく効率的な洗浄方法を考える。
【試料】
実習室の各種容器(洗浄したもの)
(1)デンプン性物質の残留
【実験原理】
ヨウ素溶液(I2-KI溶液)にデンプンの希薄溶液を加えると、デンプン―ヨウ素複合体ができ、青色(青紫色)を呈する反応によって定性する。
【試 薬】 0.05mol/Lヨウ素液
【実験方法】
脱脂綿に0.05mol/L-ヨウ素液をひたして、ピンセットにはさんで食器全体に塗りつける。裏面や糸じりもふく。
2~3分放置した後、軽く水洗いし、青むらさき色に染まる部分(デンプン性残留物)の有無を観察する。
(2)脂肪性物質の残留
【実験原理】
脂質に溶解する色素を用いることにより、残留する脂肪部分を呈色する。
【試 薬】 0.1%クルクミンアルコール溶液
【実験方法】
食器の表面を、クルクミン色素をしみこませた脱脂綿をピンセットにはさんでふく。裏面や糸じりもしっかりふき、2~3分放置した後、軽く水洗いする。
ハンディUVランプ(365nm)で観察する。(残留脂肪がある場合はその部位が黄緑色の蛍光を発色する。)
(3)たんぱく質性物質の残留
【実験原理】
ニンヒドリンがアミノ酸に作用するとアミノ酸が脱アミノ化し、生成したアンモニアがニンヒドリンと反応して紫色の物質を生成する。
【試 薬】 ニンヒドリン溶液:0.2%ニンヒドリン・n-ブタノール溶液
【実験方法】
①ニンヒドリン溶液 約5mlを食器に入れ、全体にいきわたらせる。
②溶液を試験管に移し、ヒートブロックで1~2分加温した後判定する。(たんぱく質の残留がある場合は紫色を呈する)